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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)396号 判決 1976年1月28日

控訴人 田中綾子

右訴訟代理人弁護士 紺野稔

村岡三郎

右訴訟復代理人弁護士 安藤良一

山上芳和

被控訴人 岡本格二郎

右訴訟代理人弁護士 我妻源二郎

正田昌孝

奈良道博

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。東京都大田区長橋爪儀八郎が昭和四二年一二月二一日受付けた養子縁組届による訴外亡岡本と被控訴人との養子縁組を無効とする。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、控訴代理人が、「養子縁組届のような創設的届出については、戸籍法施行規則第六二条による届出人の署名の代書は認めるべきでないと解するところ、被控訴人の主張によれば、本件届出書中岡本の署名は被控訴人が代書したというのであるから、右届出は無効である。仮に、同条の適用があるとしても、本件届出には、同条第二項で要求されている代書事由の記載がない。また、代書を必要とする実際上の事由はなかったのであるから、この点においても右届出は違法である。」と述べ(た。)≪証拠関係省略≫

理由

当裁判所も、本件届出による養子縁組は、岡本の意思に基づく有効のものと判断するが、その理由は、原判決一〇枚目表三行目「藤田多重郎」及び五行目「塚田作次郎」のそれぞれ下に「(後記措信しない部分を除く。)」を、一四枚目裏八行目「証人」の下に「藤田多重郎、同塚田作次郎、」をそれぞれ加えるほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。当審で新たに提出された前記証拠中右認定に反する部分は、いずれも措信し難い。なお、養子縁組届の場合に戸籍法施行規則第六二条による届出人の署名の代書を排斥すべき理由はなく、本件の届出の際に代署を必要とした事情は、前記引用にかかる認定のとおりであり(縁組当事者の一方が他方の代署をすることも許されるものと解する。)、また、代署の場合右事由の記載を欠いても、その届出が受理された以上、縁組は有効に成立するのである(最高裁判所昭和三一年七月一九日判決・民集一〇巻七号九〇八頁参照)から、これに反する控訴人の前記主張は採用できない。

よって、控訴人の請求を排斥した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 田畑常彦 宍戸清七)

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